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広報クリエイティブの視点から考えるイケテル広報戦略のアイデアと表現

【第5回】「オリジナル」デザインの確立=デザインによるブランディング成功への導線

【広報戦略TIPSシリーズ_005】広報クリエイティブの視点から考えるイケテル広報戦略のアイデアと表現

穴吹興産 広報誌「α」第76号 特集「ORDER MADE in JAPAN ~オーダーメイド・イン・ジャパン~」

穴吹興産 広報誌「α」第76号 特集「ORDER MADE in JAPAN ~オーダーメイド・イン・ジャパン~」

「オリジナル」なものだけが、生き残る。

知的生産活動、中でも人間の創造性の比重が高い分野、たとえば、映像、写真、音楽、文章、絵画、デザイン、あるいはWebプログラミング、コンピュータサイエンス、そしてVR、AR等の領域において、「オリジナル」であることは、その活動の果実(=アウトプット)が成功するための非常に重要な条件です。なぜそう言えるのでしょうか?
理由は3つあります。
まず1つ目は、「オリジナル」でないものは人の目に留まらないから。
次に2つ目として、「オリジナル」でないものは人に感動を覚えさせないから。
最後の3つ目は、「オリジナル」なものだけが生き残るから、です。

 

「オリジナル」とは、「独自」という意味ではない。

このように書くと、何だか身も蓋もないように聞こえるかもしれませんが、しかし事実、クリエイティブの成功 or 失敗は、単に情熱を傾ければ何とかなるというものではありません。それだけ「オリジナル」であることは重要なのです。
しかし、この「オリジナル」という言葉ほどにその意味を履き違えられているものはないでしょう。どういうことでしょうか?

端的に言えば、「オリジナル」とは、よく言われている「独自」という意味ではないということです。
確かに「オリジナリティー」という言葉は「独創性」を意味しますが、それは決して「Strange」(=変な)とか、「Peculiar」(=変わっている)を意味しない。寧ろそれよりも「根源的な」、「原型の」と言ったニュアンスが強い。そもそも「Original」の語根は、「起源」を意味する「Origin」です。
従って単に奇抜なものや、新奇なものが「オリジナル」ではありません。実際、そういうものは一時的に面白がられてもクリエイティブとして生き残りません。
さらにこれがブランディングとなると、その企業や商品の方向性を誤ったものに導いてしまいます。

では、「オリジナル」の真の意味は何でしょうか?
それは、まさに「Creative」(=創造的)なものであり、そして「Genuine」なもの、つまり「本物」であるということです。
実際、「オリジナル」という言葉を「本物」に置き換えると、冒頭で述べた3つの理由はすべて得心できます。クリエイティブは、「本物」でなければ人の目には留まらず、「本物」でなければ人を感動させることができず、「本物」でなければ生き残ることができません。

 

「オリジナル」なデザインは、ブランディングを成功に導く。

「オリジナル」なものは「根源的」であるからと言って、決して型にはまったもの、退屈なものではありません。寧ろその真逆です。
「オリジナル」なものは美しく、オーセンティックであり、シンプルであると同時に奥深い。そして、常に新鮮です。iPhoneiPadのデザインを例に取れば、「オリジナル」の真の意味は明白です。
それはまたブランディングを正しい方向性へ、成功へと導きます。Appleブランディングは、iPhoneiPad誕生によって今の成功へと至ったのは誰もが認める周知の事実。

「オリジナル」なクリエイティブ、特にグラフィックデザインにおけるそれは、デザインがブランディングを正しい方向と成功へと導く好例です。冒頭のビジュアルもその一つ。

大手マンションデベロッパー発行の広報誌のリニューアル創刊案件で、それまでの情報誌的な編集方針を改め、企業としてのブランディング強化を意識し、コンテンツとデザインのクオリティと高い統合性を持つ広報誌スタイルへと一新することを提案。時期を同じくして発売された、オーナーによるセミオーダーメードのリビング設計が可能な高付加価値マンションシリーズ紹介への導線として、デベロッパーのメインの展開エリアである中四国、関西の高付加価値のオーダーメード製品を日本の「本物」のモノづくりを共通の切り口にして紹介しました。

誌面デザインにおいては、グラフィックの基本コードとして、エディトリアルの美しさ、端正さ、そしてビジュアル配置の面白さと新鮮さを追求し、カラーリングも白地をバックに黒、赤、紺、黄色をポイント配置。かつキャッチフレーズのスタイル、コピーのトーン、フォントと写真間のスペーシングに至るまで周到に計算して調整。あらゆる点でクオリティと統合性を追求しました。
結果、広報誌デザインが企業イメージ、マンションのクオリティ性を象徴する「オリジナル」なものとして機能することに成功。「オリジナル」デザインが、ブランディング成功への導線の役割を果たした典型的な案件となりました。

※初出情報 本記事は2016年12月7日に「クリエイティブ経済誌 BTL (Business Timeline) 」に掲載されたものです。

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